今週は渓流釣りが年に数回しかない最高のコンデションだと思われましたが、誠に残念ながら会社の会議が金.土と有り行けませんでした。其処で先週の帰郷の際に氏神さまである武水別神社八幡宮に参拝した時の話を致します。
我等日本人は正月には近くの氏神さまに初詣に行きますね。しかし一年のちょうど真ん中での参拝習慣も有るのです。
其れは6月30日に行われる『夏越の大祓』の中に有る『茅の輪くぐり神事』です。大祓とは宮中でも行われる禍事や穢れを祓い清める重要な神事です。『禍事』 とは災いや凶事をさします。一方で『穢れ』の事は直ぐにパッとは理解し難いと思いますので簡単にお話します。宮地獄神社より
例えば全く知らない人の生血がマグカップにタップリと入っておりました。やがて其の血を保管する必要が無くなり、時間が経過して真っ黒になった血を廃棄します。其の後に血を入れたマグカップを綺麗に除菌清掃致します。其の洗い終えたマグカップで冷たいビールが飲めるか飲めないかなのです。綺麗に洗ったとしても知らない人の生血が入っていたカップでビールを飲むなんて嫌ですよね?此の何と無く嫌な気持ちを持つ事は、其のカップに『穢れ』を感じるからなのです。
つまり『穢れ』と様々な『禍事』を持った魂魄 を祓い清めるのが大祓と言われている神事になりますね。此れこそ現代を生きる日本人に必要な事の様な気が致します。私も思い当たる事が有り過ぎます(笑)。
日本の神社に伝わる茅の輪くぐりは、写真の茅の輪を一定の方法でくぐる事により大祓となります。
くぐり方の説明書きです。此れは『渦』を現しております。
では何で茅の輪をくぐるのか?
日本の古文献に武塔天神と言う神が出てまいります。此の武塔天神さまは別名を牛頭天王と言い、われわれのよく知っている素戔嗚尊(スサノオノミコト)の別名となります。備後國風土記に伝わる蘇民将来説話によると疫神とも明記されております。
恐ろしい御顔の牛頭天王像。牛頭天王は祇園精舎の守護神でもあります。京都八坂神社の祇園祭は牛頭天王信仰の極みのお祭りですね。京都新聞さまより
その牛頭天王の話を簡単にします。嫁取りの旅に出た牛頭天王がある村にさしかかりました。辺りは暗くなったので一夜の宿を取ろうとしました。此の村には巨旦将来(こたんしょうらい)と蘇民将来(そみんしょうらい)と言う兄弟が暮らしており、富裕な弟の巨旦将来を訪ねると、無下に断られました。一方で貧しい兄の蘇民将来は断らず粗末ながら牛頭天王をもてなしました。其の後牛頭天王は嫁を取り8人の王子と共に戻ってまいりました。そして密かに蘇民将来に使者を送り、一族は茅の輪を腰につけておくように言ったのです。素直な蘇民将来は妻と子供と共に茅の輪を腰に付けておりました。其処に牛頭天王と8人の王子の軍が押し寄せて巨旦将来(こたんしょうらい)の一族を滅ぼしたのです。茅の輪を付けた蘇民将来の一族は難を免れました。此の故事により茅の輪くぐりが行われております。
此方は玄関前に飾る蘇民将来の護符です。蘇民将来子孫と書いてあります。
此方も蘇民将来の護符です。我が信州では此方が主体です。
此方は我が家の玄関に有る蘇民将来護符ニ体です。下に有る能面は能楽師の父から授かったモノです。おかげで我が家に入ってくる禍事を全て防いでくれております。
上述した蘇民将来護符を求めなくても禍事を祓う事が出来るのが日本中に有る神社で行われている茅の輪くぐりなのです。
では祓った穢れや禍事はどうなるのかと言いますと、まず流水の神様で有る瀬織津比売(せおりつひめ)が人々の穢れを川から海へ流します。そして 速開都比売(はやあきつひめ)が河口や海の底で待ち構えていて禍事を飲み込みす。そして気吹戸主(いぶきどぬし)が其れ確認して根の国に息吹を放ちます。 最後に速佐須良比売(はやさすらひめ)が根の国に持ち込まれた諸々の禍事や穢れをさすらって消すのです。この神々は祓戸四柱大神と言って古来から尊ばれている祓戸大神です。
都内では日比谷に鎮座している日々神社が祓戸四柱大神をお祀りしております。
茅の輪くぐりが滞りなく済みますと身辺は清やかな空気に満たされ、穢れも禍事も無くなり元気いっぱいになりました。今年も我が禍事や穢れを祓って頂いた祓戸四柱大神に感謝した次第です。