みすゞかる 信州の釣り人

体重0.14tの釣り師ですので目立つのが悩みです。 今までは写真を撮って釣行日誌としてましたが今後はブログとして趣味の歴史探索や刀剣も含めて綴ってみます。

お盆と菩提寺の門の不思議  

今年はお盆の週にお休みを貰いました。信州人にとってお盆は年末の年越しと並んで特別な日なのです。特に我が家は本家にあたります。此処では紹介致しませんが色々な風習が存在しており、長男の私は忙しい日々を送ります。

床の間にお盆の盆棚を飾ります。31代まで遡り、ご先祖さまの戒名を書いた杉板を飾ります。我が家の由来は次の通りです。
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古来より更科の地に鎮座していた武水別神社という古社に、安和年間(968~970)において京都の石清水八幡宮より八幡神が勧請されましたが、我が先祖は京都より八幡神と一緒に更科の地に来た神職だったと伝わります。

お盆用の銀屏風を飾りご先祖様に楽しんで貰います。
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ご先祖さまにご飯とお酒と天ぷらなどの料理をお供えし、家族もその前で食事を行います。此れは我が家のご先祖さまの長旅の疲れを末裔の我々と一緒にご飯を食べて頂く事で癒す目的がございます。何故か何時も天ぷらが付いております。
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送り盆にはご先祖さまはお帰りになります。カンバの樹皮を玄関で燃やし、其の火と提灯の灯りでご先祖さまをお送り致します。

前置きが長くなりましたが、今回の主題は菩提寺の山門についての話です。

我が家の菩提寺である高円寺さんです。此方は中門です。
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参道には六地蔵さんがございます。
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此方が表門となります。此の造り込みは『高麗門』と言います。
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高麗門とは二本の本柱の上に切妻の屋根を乗せ、本柱の後ろ(内側)に其々の控柱を建て、本柱と控柱の間に小さい切妻の屋根を乗せた形式をさします。お城の城門や大寺院の門として用いられました。江戸城の外桜田門などが同じ造りですね。

正面からの撮影です。
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内側からの撮影です。門を支える四本の柱は全て正方形であり、一辺の長さが40cm弱も有る木材です。屋根や瓦など含めると相当な重量になる事は安易に想像出来ます。
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驚くのは此処からです。何と此の表門は四つの『敷石に置いてあるだけ』なのです。門の創建年代から考察すると関東大震災の頃には既に有りました。子供の頃は此の柱に登って遊んでおりました。何という罰当たりな子供だったのだろうと反省しております。

敷石です。
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此方の敷石には明らかにズレた跡が有ります。門に向かって手前側です。
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柱の下の部分には結構な厚みの銅板が装着され鋲(びょう)で止められております。恐らくは雨水や雪によ木材の腐食を防ぐ為でしょう。
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此の工法を『石場建て』と言います。門だけではなく、普通に一般住宅にも用いられておりました。一般住宅は敷石に組み込みで仕上げられた建物を乗せ、土に藁を混ぜ練り上げて土壁とし、其の上に重い瓦屋根を乗せて造られております。地震が来ると揺れますが、最初に重い瓦が落ちて建物を軽くし、其の後は泥壁の外側が落ちます。そうする事で地震から建物を守る仕組なのです。滅多に外れませんが、仮に敷石から柱が外れた場合は古来からの技法である曳家(ひきや)の技術で元に戻したと言われております。ただ置いてあるだけの木造建造物が其のままであると言う話は、時期が時期だけに関心を持った次第です。

大事なのは其の基石を置く下地であるとの事です。まず地面を基石よりかなり大きめに四角く深めに掘り、堀った周囲に平べったい石を穴が横に広がらない為に置きます。此れは横の力へのストッパーの役割をするらしいです。其の後土の上に小さめな砕石を敷いて大木槌てならし、今度は子供の拳骨くらいの石で中を埋めます。石同士の隙間が出来ない様に砂を入れ、更にその上に小さな砕石を敷いて、最後に極小の石を敷きます。仕上げは大きく重い木材を三脚で吊るしては落として固めるとの事です。奈良の正倉院などは、柱ではなく建物より広く此の工法を施行してあり、東寺の五重塔に代表される高層木造建築は通常よりかなり深く広く土台を固めているとの事でした。

以上は送り盆の時に住職に教えて貰いました。