みすゞかる 信州の釣り人

体重0.14tの釣り師ですので目立つのが悩みです。 今までは写真を撮って釣行日誌としてましたが今後はブログとして趣味の歴史探索や刀剣も含めて綴ってみます。

次女懐剣用桐箱が仕上る

一昨年の事ですが、本年一月に行われた次女の成人式用に短い短刀を手に入れました。そして後に懐剣に合わせた拵え(外装)を誂えたのでした。懐剣の作者は大正から昭和初期まで活躍した堀井秀明刀匠です。

堀井刀匠は連合艦隊旗艦三笠の大砲の鉄材を『卸鉄』の言う手法で刀の材料と致しました。『卸鉄』とはオロシガネと読み、様々な古鉄や往時の折れた刀などを火床で赤めた後に、水へし、小割り、積沸かしなどの工程を経て炭素量を調整し鉄材とする事です。私の読んだ文献によると実に清廉潔白な人柄で信頼に足るる刀匠であったと伝わっており、堀井刀匠の一派は今でも北海道室蘭で鍛刀しており、私の記憶だと現在まで6代目だと思います。拵えは東京府中の研ぎ師である春藤先生を通して誂えて貰いました。

以前長女に送って貰った次女の写真が見当たらないので、此の写真は車中で次女を撮影した写真です。ギュッと絞めた帯で苦しそうな此の写真しか無くて申し訳有りません。実に御見苦しいのですが、女性の懐剣は着物の此の部分に差し込みます。この時は目出度い日だったので卯の花色の房紐を付けました。此れが長めの短刀だと小柄な次女の顎に当たりますね(笑)。
f:id:rcenci:20221001135801j:image

刃長が15.3cmと少ししかない小ぶりな短刀です。
f:id:rcenci:20221001135819j:image

此方が拵えです。鞘の色は鳶色で、写真では見え難いですが黒漆で我が家の家紋である九枚笹が施されております。短めの下緒は濃色(こきいろ)と言う紫にグレーを混ぜた様な色なのですが、写真では違う色に見えますね。
f:id:rcenci:20221001135944j:image

柄は親粒のある黒鮫で仕上げ、赤銅の花瓢箪図目抜を付けました。
f:id:rcenci:20221001135957j:image

此方が懐剣の袋です。何時もは写真の様に濃い紫の房紐を付けております。
f:id:rcenci:20221001140011j:image

そして此方が保管用に誂えた刀箱です。製作は現在私が住んでいる三重県松阪市の隣にある伊勢市の軸装屋さんにお願い致しました。此方の店は伊勢神宮関係の仕事をしいる腕利きの職人さんが揃っており、安心して任せる事が出来ました。
f:id:rcenci:20221001140026j:image

蓋を開けて真上から見た図です。
f:id:rcenci:20221001140040j:image
懐剣が横に転ばない幅にスペースを狭く仕上げて貰いました。拵えのスペースは房紐の分も余裕のある幅に仕上げ、車での長距離移動時には収納スペースの下と横にプチプチなどの緩衝材が入れられる様に腰高に仕上げて貰いました。

私の手が大きい事も有りますが、拵えを含めて実に小ぶりな短刀です。
f:id:rcenci:20221001140053j:image


此の透かしも気に入りました。
f:id:rcenci:20221001140128j:image


内側にも同様の透かしが施されてます。
f:id:rcenci:20221001140139j:image

 

刀箱の下側です。
f:id:rcenci:20221001140156j:image

現在悩んでいるのが箱書
きです。書は苦手では有りませんが、墨香が漂うような書を揮毫する度胸と意気地が有りません。失敗して鑢目を付けたく無いので、和紙に筆書きして続飯(ソクイ)で貼ろうと思います。続飯とはご飯粒を練ったノリの事です。

このまえ娘に刀袋に付いている房紐の結び方を軽く教えましたが、恐らくは忘れているでしょうから今度帰ったら特訓です。
f:id:rcenci:20221001140312j:image

箱の材質は桐の木です。桐と言えば桐紋が有名ですね。元々は天皇家の紋章を弾正の家系である織田信長公が拝領し、信長公から豊臣秀吉公が使用を許された経緯が有ります。現在は日本国政府の紋となってますね。なんでも桐の木にだけ伝説の神鳥である鳳凰がとまると伝わります。

それと釣り師のみ知る事ですが、無垢の桐の木で出来た餌箱は夏でも外の熱が伝わり難く、川虫が生き生きとして重宝な品なのです。また以外がも知れませんが桐は火事に強いのです。桐箪笥などは小火(ボヤ)くらいでは外側は黒くなりますが中の着物などは燃えません。何層もの空気を含んだ層が火を防ぐそうです。でも小火で無く長時間の火災では木材なので炭化するみたいですね。もう一つの桐材の良い特性が腐食しないで虫が着かない点です。落ち着いて考えてみれば、我々にとって実に有益な木材ですね。

此れが瑞泉堀井秀明作の短刀です。私が没した後も何卒次女を守って欲しいと改めて願った次第です。
f:id:rcenci:20221001140322j:image