みすゞかる 信州の釣り人

体重0.14tの釣り師ですので目立つのが悩みです。 今までは写真を撮って釣行日誌としてましたが今後はブログとして趣味の歴史探索や刀剣も含めて綴ってみます。

更級への帰郷 父の残した品々

連休の後半に帰郷する事になりました。信州の春はとても美しく、水彩絵の具のような淡く柔らかい色に染まる山々が迎えてくれます。更級を流れる悠久の千曲川には河原に菜の花を小さくした様な西洋ヤマガラシが黄色い花を咲かせており、5月の爽やかな風に其の花を揺らして誇らしげです。新緑と山桜に煙る山の向こうは雪を抱いた神山がそびえており幻想的な光景なのです。

淡い新緑と山桜でパステルカラーに成っている山の奥には雪を抱いた北アルプスが見えます。  長野県公式観光サイトより

家の刀の手入れをしました。

私の父は67歳でこの世を去りました。観世流能楽師範で有った父は毎日お弟子さん達と稽古に勤しみ、稽古が終わるとお茶を飲みながら楽しげに懇談する姿が思い起こされます。郷土歴史家の側面を持ち、食事の時は歴史の話を延々と話しておりましたので子供の私にとっては少し苦痛(笑)だった事も有ります。頷きながらお味噌汁を飲むとむせるのです(笑)。

祖父から伝わった刀剣などの武具についても話が尽きる事は無く、此方も食事の時の話の一つでした。覚えているのは寒い日にお味噌汁から湯気が上り、その湯気をよく見ると小さい粒々が沢山ある事に気が付き、その事を父に話すと『よく気が付いたな、うちの刀をよく見ると、同じ様に刃縁に細かい粒々が沢山付いているから後で見てごらん』と言いました。しかしその後に父親に鞘から抜いて貰った刀をよく観察しましたが、サッパリ分かりませんでした。今思うと父親は残念だったろうにと思う懐かしい話です。 

白い部分は白くなる様に研磨師が研いだ色であり、その中のグレーの部分が刃文です。此の刀は沸出来と言うタイプの刀で刃文と上の部分との間に小さい粒々がモワ〜と付いております。この小さい粒を沸(にえ)と言いますが、恐らくは此の事を言いたかったと思われます(指で拡大出来ます)。父親が今存命であれば色々話が弾んだと思います。

また父親は観世流能楽師なので家に伝わる能面や狂言面を一部を紹介します。基本的に日本でも西洋でも面を付けて演じる役は人ならぬものです。面を付けると言う事は能役者にとって自らを役に変貌させる呪の様な要素があると聞きました。面をつけて顔をやや上に向けることを『テラス』と表現し、笑っているような明るい雰囲気が出ます。また逆に顔を少し伏せることを『クモラス』と言って泣いている様な悲しい雰囲気を出します。

一番基本的な小面(こおもて)です。『小』は可愛いと言う意味で若い可憐な娘の面です。我が家に伝わる小面は何となく明るい雰囲気の面なのです。 

裏です。面打師のノミ跡が残り、拭き漆で仕上げております。

狂言面と良い、恵比寿さんを表した面です。顎髭を打ち出した珍しい面なのです。

裏です。先程の小面の裏と全く処理が違います。

コチラは大分古い時代の面です。最初の小面とは随分雰囲気が異なりますね!

裏です。他にもたくさん有りますが、恥ずかしながら少し怖い面もあるので写真はやめておきます。小鼓(こづつみ)などは次の機会にご案内致します。

謡本(うたいほん)も膨大な量です。

床の間に母がお気に入りの美人画の掛け軸が飾られておりました。

やはり実家は落ち着きます。本日は町田の家から娘達も来て、妹と義弟が庭にバーベキューセットを広げて家族揃った焼肉パーティーでした。天気も良くて久しぶりに満喫した次第です。