昨年の10月から美し国(うましくに』と呼ばれている三重県に転任し、10ヶ月が経過しようとしておりますが、勤務地の松阪市から月一回の会議が行われる津市の往復のみで、他の場所を訪ねてみたりする事は致しませんでした。
ところが今回、部下の課長が急に尾鷲にある支店に転勤すること事になったのです。サラリーマンに転勤は付き物ですが、良いヤツだっただけに少し寂しくなります。1週間ほど現地での引き継ぎを行なって来た課長の話だと、尾鷲は魚がとても安くて美味いので、週末にご一緒しませんか?との事でした。距離的には松阪市から1時間半くらいです。せっかくなので転勤した課長と松阪支店の次長と私の3人で訪問してみる事に致しました。心の中では『なんて可愛いヤツだ!』と思った次第です。
40半ばと50代2人の男3人で遠足気分で向かったのはこの店です。店名の『鬼瓦』とは実に面白い名です。なんでもご主人様は格闘家であるとの事です。外も店中も清潔感があって居心地の良い感じがする店でした。
部下を尻目に今回は運転手ではないので冷酒で喉を潤させて頂きました。
頼んだ御料理は刺身7点盛り定食の岩牡蠣付きと本日の煮魚ですが、最初に出て来たのは定食セットと岩牡蠣でした。山育ちの私にはどれも此れも美味しそうです。
大きな岩牡蠣をツルンと頬張ると牡蠣で口の中いっぱいに成り、其れを日本酒で流すと牡蠣の香気が鼻腔を通り過ぎ、思わず目を閉じてしまいました。
7点盛りのお刺身がまいりました。白身はコリコリの食感で鮮度は抜群です。刺身は熟成の為に寝かせた方が美味いとか、身が活(いか)ってコリコリした方が良いとかありますが、地魚は断然に活かっていた方が美味く感じます。
お次は大き過ぎて嬉しい煮魚が出てまいりました。なんでも地魚の『よろり』と言う魚らしいですが、此方も美味い魚でした。この辺りで私の胃袋は満タンのうえに更に予備タンクまで満たされてしまいました。
太刀魚の様に歯が凄いです。
ご馳走の三段攻めでスッカリ満腹+予備タンクまで満腹になりました。其の後は、せっかくなので少し観光しようと言う話になりました。そこで名勝地で世界遺産でもある鬼が城と言う場所に寄ってみました。
凄い景色です! 海無し県出身の私には眩いばかりです。
見事な鳶が舞い降りてまいりました。鳶は神武天皇に勝利をもたらせた縁起の良い鳥ですので有難い事です。
自然の造形美が大迫力でした。
鬼が城を後にして、もう一つ部下のおすすめの場所に向かいました。其の名は花の窟神社(はなのいわやじんしゃ)と言う巨大な磐座が御神体である神社です。此方の神社は日本書紀にも記されている伊邪那美大神をお祀りしている日本最古の神社と言われているみたいです。
参道にはノボリが立っておりました。此の神社の新紋は天皇家の五七の桐みたいです。
岩山から落ちて来たと言われている玉石が神秘的です。この玉石は授かった御守りにも記されておりました。
伊邪那美の大神にお詣りし、日頃の感謝の意をお伝え申し上げました。
上には巨大な磐座が聳え立っております。此の岩倉に伊邪那美神が降臨すると思われます、拝殿が無い太古の祭祀の場である事が分かりますね。
そして、なんと伊邪那美大神の前には御子神である迦具土命(カグツチノミコト)がお祀りされておりました。それも真正面から少しづらして母神と対面する形でお祀りされているのです。驚愕と共に温かい気持ちになりました!
迦具土命(カグツチノミコト)は火の神様です。ご存じの様に伊邪那美大神は迦具土命を御産みになり、陰部に火傷を負ってしまって黄泉の国へ行ったのです。悲しみのあまり伊邪那岐大神は天之尾羽張(あめのおはばり 十拳剣とも)と言う大剣で息子の迦具土命の首を切り落としてしまったと言われております。此の時に剣の鍔から滴る迦具土命の血から生まれた神の一柱に後に大国主に国譲りを迫る武甕槌神(タケミカヅチ)がおります。
正に神代における大惨劇なのです。学生の頃だと思いますが、最初に此の場面を知った時に、神様の話とはいえ、とても切ない感情が湧いてまいりました。ところが此の神社には母神の伊邪那美大神と向かい合う様に迦具土命がお祀りされております。伊邪那美大神は伊邪那岐大神と共に八島の国(日本の国土)を創った神様ですが、自分が黄泉の国へ導いた原因でもある迦具土命に対して母の慈愛に溢れる形で見守ったいる様にも見えました。神様でも人間でも他の動物でも家族の繋がりは心温まりますね。心の中のワダカマリを解いてくれた今回の縁に心から感謝した次第です。