みすゞかる 信州の釣り人

体重0.14tの釣り師ですので目立つのが悩みです。 今までは写真を撮って釣行日誌としてましたが今後はブログとして趣味の歴史探索や刀剣も含めて綴ってみます。

私念を宿す刀の実話と祖父の教え

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前にも書きましたが、10月半ばに母方の実家の叔母が100歳を迎え、お祝いの為に行ってまいりました。今回は其の折に叔母が実体験を元にして私に語った一口の刀に纏わる実話となります。

集まった親戚一同です。f:id:rcenci:20251115184939j:image

祝宴の翌日の朝に叔父の残した小錆が出ている刀剣を一部手入れ致しました。刀を4口、脇差5口、短刀7口ほどです。茎の深錆も油で浮かせて鹿角で可能な限り落としました。

手入れした刀を一口だけご紹介致します。越前国住兼植(カネタネ)ニ尺二寸一分です。銘を名鑑で確認致しますと、恐らくは初代の作刀だと考えます。f:id:rcenci:20251115185021j:image

寒山先生の鞘書きに『古風直刃出来よし』と有ります。地鉄が均一に詰んでいる割には肌が立ち、焼刃にも一切の破綻がない美しい名刀でした。f:id:rcenci:20251115185015j:image

叔父は長く刀剣商を営んでおりました。話は一般の所有者から売却を依頼された事から始まります。

ある時叔父が、信州では指折りのブランド米の産地として有名な五郎兵衛新田の某旧家から、娘さんが嫁ぐ折の調度品購入に充てる為、伝家の宝刀を売りに出したいとの依頼を受けました。

五郎兵衛新田のお米は『幻の米』と言われており、地元でも高級割烹や料亭などで使われております。f:id:rcenci:20251115185036j:image

此の刀は江戸時代初期に前述の某旧家の主が私財をなげ打って用水を開削し、大規模な新田の開発に成功した事から、当時の小諸城の主であった牧野公より拝領した名刀だったとの事でした。

戦国の名城である小諸城の大手門です。城跡は現在でも『懐古園』として残されております。此のお城は城下町より下に有り、日本で唯一の『穴城』になります。f:id:rcenci:20251115185050j:image

叔父は、預かった刀を持ち帰り、寝室の枕元に立て掛けたといいます。刀を立て掛けた位置は、叔母が寝ているベッドの枕側の少し奥だったとの事ですが、其の日から叔母は毎夜悪夢にうなされる日が続いたとの話です。叔母から聞いた夢の内容は残酷過ぎて此の場での公表はやめておきます。

幾晩か後、叔母は余りにも悪夢が続くので『何か有るのか』と家の周りや届けられた荷物や手紙などを確認してみたり、最近訪れた場所で何か問題が有ったのかなど考えてみた様ですが、思い当たる節は何も無かったようです。

ある日叔父が商いで外出し、叔母は何時も通り家の中を掃除していると、立て掛けてあった刀が何となく目に留まったようです。

日頃から家の中に置いてある刀なんて見慣れている叔母でしたが、どうも其の刀だけは気持ち悪く感じ、今度は叔父のベットの方に移動させたとの事でした。何と其の日から今度は叔父が毎晩うなされ続けたそうです。此の話は妹である母も聞き覚えが有ると言っておりました。

更に数日経過した後に、刀の入荷を知れせておいた御客様の1人から是非見てみたいと依頼が有ったそうです。叔父は其のお客様宅に車で向かう道すがら、知り合いで神主を務める有名な拝屋さんの所へ立ち寄ったそうです。何と其の神主さんは一発で『車に何か積んでいるな』と言い放ち、早速其の刀を改めたところ『此の刀は直ぐに御清めが必要だ』と叔父に伝えた様です。

表題の刀では有りませんが、以前に叔母から授かった拵え付きの大太刀です。f:id:rcenci:20251115185106j:image

御客さんの家に着き、刀を見て貰いながら夢の事や拝屋さんからの話を伝えたみたいです。しかし、刀好きのお客さんは購入したいと叔父に言ったとの事でした。霊力のこもった刀にむしろ魅力を感じたのでしょうか。私も少しだけ気持ちは分かります。

叔父は御客さんに売る刀を綺麗な状態にする為、馴染みの研師に研磨依頼を致しました。研師は自らの仕事自体が刀を清める事にもつながります。しかし研師さんも、尋常では無い違和感を覚えた旨を叔父に伝えたみたいです。

現在の五郎兵衛新田です。f:id:rcenci:20251115185120j:image

やがて研磨が終わり、再度一連の変事を御客さんに伝えましたが、購入の意思は変わらなかったみたいです。代金を受け取り、研磨代金と白鞘代金、及び手間賃を差し引いた残額を旧家の主に渡して叔父の仕事は終わりました。悪夢も嘘の様に無くなったみたいです。

問題は此の次なのです!実は叔母の話で一番戦慄した内容は此の後の事となります。

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何と其の名刀を購入したお金持ちの家族は短い間に全て死に絶えてしまいました。その後時を経て、此の刀は次の所有者の持ち物となりました。ところが次の所有者の家にも大変な災い(家族の大半が死亡)がもたらされたのです。此の二件の出来事は狭い地域なので叔父の耳にも届いたみたいです。

其の後、此の刀は行方知れずとなりました。名刀だけに其のまま朽で居る事は無く、縁者は売るはずで有り、恐らくは他の地域に渡ったと思うとの事でした。

牧野氏の様な大名家には『御腰物奉行』が居り、武具の管理を担っておりました。当時は今よりもずっと神仏への信心が厚い時代であり、刀剣類も確りと清められていた筈です。従って此の刀は某名家に移ってから何かしら邪悪な『私念』が備わったものだと思います。

某名家で何が有ったかは謎のままです。しかし名家に存在した時は何も無かった事が此の刀の持つ因果に何か関係が有るのかも知れません。つまり本当の門外不出だったと言う事です。f:id:rcenci:20251115185159j:image

私は父から受け継いだ刀剣以外で、刀屋から購入したり、知人より譲り受けた刀剣は全て氏神さまの御前で御祓いを行ってから刀箪笥に納めております。祖父や父の教えを守っているだけなのですが、本当に良かったと思いました。

白黒ですが、在りし日の我が祖父です。拵えの刀は文明年紀の備前国右京亮勝光です。私にとって刀剣は実に身近で尊いものでした。f:id:rcenci:20251115185220j:image

戦後の歪んだ報道で日本刀は『危ない物』とされております。しかし、実際に其れまで日本人は刀剣に高い精神性を一千年を超えて見出しておりました。私も祖父から『刀は高潔な魂に寄り添う、お前も刀に好かれるように立派な大人に成れ』と教えられました。しかし、困った事に我が魂は精進が足りず未熟なままです(笑)。

今回を機に私も刀に好かれる様に自らを律していく事を固く誓った次第です。今回の話は恐ろしい事ではありますが、『刀に罪は無く』事象全ては『人間側の問題』に有る事を付け加えさせて頂きます。

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表題の刀が現在は清められ、高潔な精神を宿されている御方の所持となっている事を切に願わずにはいられません。