みすゞかる 信州の釣り人

体重0.14tの釣り師ですので目立つのが悩みです。 今までは写真を撮って釣行日誌としてましたが今後はブログとして趣味の歴史探索や刀剣も含めて綴ってみます。

趣味の話  郷里の陶器 松代焼

子供の頃の事ですが更科に住む陶磁器好きの母親が、お正月の料理を盛り付ける為に押し入れの中から箱入りの器を幾つも出しておりました。お手伝いをしていた私は毛筆で書かれている箱書が読めずに何て書かれているのかと母親に聞きました。母親は『これは丹波焼と書いて有るのよ』と教えてくれましたが丹波焼が何かはサッパリ分かりませんでした。やがて社会科の授業で丹波焼を含めて六古窯と言う日本古来の窯が有って、六つの代表的な産地をさしている言葉だと学びました。その時の社会科の先生が陶器に造詣が深く、日本書紀に登場する人物である野見宿禰大麻蹴速を御前試合で打ち負かした事や墳墓に生き埋めにされる人間の代わりに埴輪を造って埋めた事で朝廷から土師臣(はじのおみ)の称号を貰い、埴輪などの土師器(はじき)の制作を行った事を聞いて相撲好きだった私は陶器の歴史に興味を持ちました。社会人に成ってからは安い給料で瀬戸、常滑、越前、信楽丹波備前それぞれの酒器を少しづつ購入し、気に入った一揃いで一杯やるのが楽しみとなり、今でもゴソゴソ取り出して楽しんでおります。瀬戸焼の黄色や瀬戸黒も好きですし、信楽の灰釉や備前焼の力強い土の質感などを感じながら杯を重ねると、徳利がすぐに空に成ってしまいます。磁器も良いですが温かみのある陶器が好みなのです!

今日ご紹介したいのは地元の焼き物で長野県指定伝統工芸品である『松代焼』という焼き物です。松代は真田家が治めた城下町であり、川中島合戦で登場した海津城でも有名です。真田家の統治のもとに焼き物の生産が奨励され山城や近江より陶工を招いて生産が行われましたが藩窯でしたので一般には流通しなかったみたいです。やがて瀬戸物など大量生産された安価な陶器におされて昭和初期までに廃窯となりましたが、時を経て昭和47年頃に廃窯後に残された破片や残された資料から研究がなされて再生産が始まりました。松代焼の復活を志した皆様の努力により現在は地域を代表する焼き物となっております。特徴は鉄分の多い土と自然釉を使い、口元から溶け出した『青流し』と呼ばれる青緑の色です。初見の人は独特の色がファンキーにも見えますが、北信の家には必ず一つ二つは有るので我々から見ると心地良い色なのです。松井窯さんの何処までも柔らかい緑、唐木田窯さんの透明な青に浮かぶ林檎の色の様な淡い赤など製作元で個性が有りますね。何れの工房も松代ないし近隣に店舗を構えて松代焼の作品を求め易い値段で販売しております。

松代焼の大花瓶です。大ぶりで沢山の花が入り、不思議にどの色の花にも相性が良く感じます。柔らかい緑が流れる様が松代焼独特の風合いです。
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大花瓶の裏です。
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松代焼の小ぶりの花瓶です。此の花瓶はブルーハワイの様な透き通る青に独特の模様が入る唐木田窯さん独特の風合いです。 
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裏です。
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こんな物まで写して申し訳有りませんが気に入って使っている松代焼の楊枝立てです!
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松代焼のお皿です。
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透明な青の中に柔らかい緑が浮かび上がる幻想的な景色です。また昔の話で申し訳ありませんが、子供の頃に更科の猿ケ馬場峠という峠までキノコを取りに友人達と行きました。其処で途中にある『猿飛の池』と地元では言われているブルーハワイの様な水色をした池を見ました。

青色を拡大してみました!
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此のお皿に出ている景色は正に猿飛の池の青い水面に木々の緑が映り込む景色です。此のお皿には白身の魚を薄く切ったお刺身を乗せて食材越しに下の色が楽しめる様に盛り付けようとしておりますが、未だかつて上手に盛り付けが出来た事は有りません!

お客様が来た時などに使う大ぶりな松代焼の徳利です。一本で2合以上入る大きな徳利でして写真の2本を飲み切ると朝までの熟睡をお約束出来ます!
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松代焼松井窯の職人さんによる手びねりのぐい呑です。
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角度を変えてもう一枚!
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土の質感が手びねりにより表面に出ており、手持ち感覚も抜群です。欠点は大容量で飲み過ぎてしまう事であります。(コマッタモンデス)

少し小さいぐい呑みで普段使いの品です!
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5客購入して戸棚に残るは3つです。2つは落として割ってしまいました。残念ですが仕方ないのです!松代焼は使う器なのです。

手作りの陶器は火の加減や釉薬の具合により様々に窯変し同じ物は2度と出来ません。松代焼を見ると信州の青くて高い空や峻険な谷筋を流れ下る渓流の深淵に似る青い色、山が淡い緑のベールを纏う風薫る五月の更科などが脳裏に浮かびます。郷里である更科から離れて暮らしている私にとっては高校卒業迄の多感な時代を過ごしていた中で登場する思い出の器であり、現在は大事な癒しの器と成ってあります。