刀剣鑑賞の朋友達である『若草会』で梅雨の宴を開催致しました。刀剣を皆で鑑賞するときに刀枕という円筒状のクッションが必要であり、その色を若草色で統一した事からきた会の名です。刀剣類は元々武器として生まれましたが、刀剣が持つ高い精神性から日本人の感性に符合して現在は美術品として愛好されております。今回は先輩が加州陀羅尼橘勝国の脇差を手に入れましたので、其のお披露目会となりました。先週の休日に地域の氏神である諏訪神社に於いて先輩の家の守刀となってもらう為に祝詞をあげてもらいました。
場所は高尾山の正式な登口に店を構える『ろくざん亭』さんです。お肉料理が最高に美味しく、雰囲気は更科の実家に帰ったような温かい気持になれる知る人ぞ知る名店です。
少し前まで店を閉めていたとの中居さんの話でした。本日は予約で満席と聞き嬉しく思いました。亡妻と思い出の名店が閉まらなくて良かったです。
離れに部屋を取って頂き、早速に陀羅尼橘勝国の鑑賞と成りました。即席に鑑賞できる環境を作り皆で慧眼した次第です。加州の陀羅尼派閥とは室町時代に美濃から一向宗門徒に招かれて加賀に住した刀工が陀羅尼勝家と名乗った事に始まる一派です。その後に代が継続し、加賀前田家に藩工として迎えられ『勝国』と名乗りました。
此の脇差は年紀から見て陀羅尼勝国の3代目の作品と思われます。
※法量及び作風について
銘 (表) 加州陀羅尼橘勝国
(裏) 享保元年八月日
刃長 39.1cm 反り0.76cm 元幅2.82cm
先幅2.2cm 元重0.63cm
平造り 庵棟 鑢目は筋違い
肌は詰んだ総柾目で棟よりに板目肌
刃文はハバキ元より三寸三分程は
頭の揃う互の目 其の上は中直刃で
刃縁ほつれる
匂い口ふっくら柔らかく明るく冴える
金筋と砂流しが肌目に沿って
出る箇所もある
帽子は掃き掛けこころに浅く返る
匂い口に叢が無く地鐵鉄も密に詰んで
冴えております。
拵えも印籠刻みの洒落た合口拵えが目を引きます。小柄は魚子地に獅子舞図が彫られて何やら楽しげな雰囲気です。黒鮫をあしらった柄には色絵を施した秋草の目貫がつけられております。きっと秋祭りの様相を現した物だと考えます。
当時の武士の外出用だったと思われる外装ですが品がありますね。
獅子頭から続く布にある模様も細密な毛彫りで現されて如何にも楽しげです。
当時の金沢の職人により銀や銅の色絵が施されております。
刀掛けに置かれた陀羅尼勝国の脇差にもお酒を注いでワイワイガヤガヤと楽しい時間はあっという間に過ぎました。集まった皆とは一時期において同じ時間を過ごした気心知れた仲間同士ですので話が途切れません!ろくざん亭さんのお料理も美味しく、お腹いっぱいに成りました。最後に皆で秋の歴史探索の旅の打ち合わせをして散会となりました。東京都は新型コロナウイルス感染者がびっくりするくらい増えているので無事に会う事を祈念する次第です。
趣味は趣味自体の楽しみもさる事ながら、良き良き友人との交わりこそ一番の楽しみである事を確認した1日となりました。